地方のマーケティング課題

いわき市を拠点にマーケティング支援を行うなかで、特に大きな課題と肌で感じるところがいくつかあります。その一部ですが、ここでその課題と解決策を記します。

マーケティング上の課題:

・専門家のジレンマ
・各プロセスでKPIを明確にしていない
・勉強する時間がない

専門家のジレンマ

自社の事業の専門性があがればあがるほど、顧客志向の観点が薄れていく傾向があります。専門性が高まると、専門的な知識そのものが自身にとって当たり前になり、あまりその専門的領域に詳しくない消費者や企業が顧客であるにもかかわらず、「知っている」ことを前提として話したりセールスしたりしてしまいます。相手の立場を考慮することができにくくなること、なるべく手間暇をかけず知らず知らずのうちに楽をしてしまうことが原因のようです。

「イタコになれ」(イタコさんのように自身に顧客を憑依させろ、の意味)という有名な言葉がありますが、必要なのはそれ以上で、実際にその顧客の商品を買ったり、消費者と同じように自社製品を自腹で購入すると、この課題を解決できることもあります。金銭感覚が多少違っても、自分の懐からお金を出すことでその価値を「感じる」ことができるので、有効性が期待できます。消費財以外を取り扱う方にはこれは難しいこともあるのですが、その場合は顧客の財務状況やキャッシュフローを数字で想定し、どれくらい顧客の懐にインパクトがあるかを知ることで、その価値を知ることもできます。優秀なマーケティング担当者は、多少の差はありますが、自分への投資として必ずやっています。

KPIの明確化

マーケティングプロセスは、市場調査、商品開発、販売促進、セールス(クロージング)、販売後のサポート(リピート)に大別されます。この各プロセス、特に販促とセールス、リピートの効果測定をきちんとしていないため、何となく売れた、売れないといった感覚的なところで商いをしていると感じます。長年続く商売だと、何となくで目先の数字はどんぶり勘定できるのですが、今の時代は不確定で不安定なため、気づくと前年より売上や利益の数字が少し下がる、という負のスパイラルにはまってしまいます。流石に経営者はキャッシュが減っていくのでそこまでではないですが、ただ何となく数字を見ていることもあります。数字を眺め続けていると、だんだん敏感になり、このマーケティング課題を解決できるようになるので、予算を取ってデジタル化を進めるなど、できる限り各プロセスを数字化することで、事業継続性を高められます。

勉強する時間がない

これは一番簡単なようで、継続する忍耐力とモチベーションを維持するのが大変で、根本的な課題なため、もしかすると一番解決が難しいかもしれません。読書が苦手な方もいますが、文章や言葉でビジョンや指示を表現する訓練のためにも、一日1ページでもよいので続ける必要があると感じます。特に経営者や部門長などのリーダーは、言葉でリーダーシップを執る必要があるので、読書をリーダーシップの訓練と捉えるのも良いと思います。「今日は1ページだけ読もう」と読み始めると、意外と章や節など区切りのよいところまで読んでしまうこともあります。

マーケティングでは顧客の継続的な成功がゴールです。「継続的」なところがミソで、マーケティングはエンドレスです。市場が変わり続けるから、ということもありますが、常に自身が進化し続けて、どんな外部環境の変化があっても成功を顧客にもたらし続けましょう。そうすることで、結果的に社会的な意義や幸せが膨らんでいきます。